2020年に日本での発売が開始された、ポルシェ初のフル電動スポーツカー「タイカン」。デビューから5年を経て、中古車市場にも魅力的な個体が増えてきて、現実的な選択肢として注目されている。
今回は、一般的なジャーナリストの試乗記や評論とは一線を画し、よりリアルな声を聞きたく話を伺ったのは、自らがタイカンを所有し、その魅力に深く魅了されたポルシェショップの代表。日々タイカンを駆るオーナーであり、様々なポルシェを取り扱ってきたプロフェッショナルだ。
タイカンとの出会いから、オーナーだからこそ語れるリアルな魅力と実用性、そしてオススメの中古車のモデル、EVの今後についてフランクに語っていただいた。
目次
<タイカンとの出会い>
──タイカンとの出会いは、どのようなきっかけだったのでしょうか?
あるお客様から「パナメーラに乗り換えたい」とご連絡いただいたのが始まりです。もともと複数台お持ちの方で、その中の一台だった「タイカンターボ」が最高に良いと、そればかり乗っていたそうなんです。
でも、そうすると走行距離が伸びてしまうのが嫌で、なんと普段乗り用にベースグレードのタイカンをもう一台買われたんですね。ただ、ご自宅の充電器が一つしかなく、結局不便になってしまって(笑)。そこでうちのパナメーラ S E-ハイブリッドを見つけて、ご連絡をいただきました。
話はすぐまとまり、私がパナメーラを納車に伺って、下取りのタイカンに乗り換えて自走で帰ってきたのが、初めての出会いです。
──初めてのタイカン、いかがでしたか?
それが、もう衝撃でした。ベースグレードの2WDモデルだったんですが、とにかく走りがすごくて!
EVの鋭い加速、回生ブレーキの効き、エアサスの乗り心地、静粛性、モーターの音…すべてが新鮮で、「なんだこりゃ~!」「すげー!」って、一人で興奮しっぱなしでしたよ。
正直、それまで私はアンチEVだったんですが価値観が180度変わりました。「これは面白い!」って、一瞬でタイカンの虜になってしまいましたね(笑)。
<タイカンとの早すぎる別れ(笑)>
──衝撃的な出会いを果たしたタイカンですが、すぐに手放してしまったとか?
そうなんですよ。本当は、これからじっくり乗ってタイカンという車を徹底的に勉強しようと思っていたんですけどね。
仲の良い911乗りのお客様に「面白いクルマ、入りましたよ」って連絡したんです。その方は最初、「タイカンは大きいから、うちの奥さんには無理だよ」なんて言ってたんですが、ちょうど911の車検の打ち合わせもあって、お店に来てくれて。
そこで実車を前にいろいろとタイカンのこと説明差し上げたら…どうやらすっかりタイカンにほれ込んでしまったみたいで(笑)。「今乗ってる911、下取りはいくら?」って話になったんです。そこからはもう早かったですね。あっという間に乗り換えが決まってしまって、私がタイカンを深く知る間もなく、売れてしまいました。
<タイカンを乗り漁る(笑)>
──最初のタイカンをすぐに手放され、そこからどうされたのですか?
いやあ、無くなると余計に欲しくなっちゃって(笑)。そこから本格的に調べ始めました。メーカーサイトはもちろん、YouTubeもたくさん見ましたね。特にジャーナリストの五味さんの動画は、すごく分かりやすくて参考にしました。
で、次に選んだのが、ベースモデルのエアサス付き、スポクロ付モデル。名古屋のオートオークションで購入して、自走で帰ってきました、埼玉まで約400kmのドライブはもう快適そのものでしたね。エンジンとは違ってモーターの加速ラグはないし、踏めば踏むほどに加速するから、アクセルを抑えながら走るのに疲れる(笑)。エアサスもフワッとせずほどよくカチッとしていて抜群の乗り心地で。フル充電状態で出発してエアコンとかも普通に使いながら特に節電もせず帰ってこれたから電費も良い。ま~、ポルシェのEVに圧倒されっぱなしでしたよ。
──その後タイカンを数台乗り継いでこられたようですが?
そう。次に乗ったのが3台目となる「タイカン4クロスツーリスモ」、ベースモデルに比べて少しパワーのある4WDのワゴンです。私は911でも空冷時代から4WDが好きなんだけどEVの鋭い加速をポルシェの4WDとPASM付エアサスがしっかり受け止めてくれるあの安定感は良いですね、「やっぱりポルシェはすごいな」と改めて感心しました。
次に、4台目となるタイカンに選んだのは「タイカンターボ」。0-100km/hを2.7秒っていう加速を味わってみたくて乗り換えてみたんだけど、加速はすごい!の一言です。4WDだから抜群の安定感で、いざっ!て時の加速も安心です。
まだまだ続くのですが、5台目は「タイカン4S」に乗りました。これはスポーツセダンのモデルです。ターボには劣るものの十分なパワーとターボに勝る電費効率で考えると、これまで乗った中で一番バランスの取れた良い車でした。
<タイカンの頂点!? ターボSに乗る>
──ここまですでに5台のタイカンに乗ってこられましたが、頂点となる一台に出会ったようですね。
ええ(笑)、仕事上、日々オートオークションをチェックしているのですが、九州のオークション会場に一台とんでもないのが出てきたんです、「ターボS」迷いなく買ってしまいました(笑)。
──タイカン ターボSは、やはり別格でしたか?
そうですね、次元が違うクルマでした(汗)。オーバーブースト時のパワーなんて、タイカン4の倍以上、0-100km/hで2秒以上の差がありますからね。異次元の加速に、最初は本当にたまげました。
ただ、それ以上に「すごい!」と思ったのは、その途方もないパワーを支えるシャシーと足回りの素晴らしさです。4WDはもちろんなんですが、リアアクスルステアリングやPDCC、PASM付エアサスといった電子制御が、あのパワーを安心して踏み抜けるように制御してくれるんです。ターボSはこれらの装備が標準なのも納得で、正直、これがないと危ないですよ(笑)。ターボSには必要不可欠な“安全装置”とも言えますね。
<オススメのタイカン中古車は>
──様々なモデルに乗り継がれてきましたが、ずばり、オススメのタイカンはどのモデルですか?
正直どれもオススメです!どのモデルも本当に魅力的ですから(笑)。
ポルシェの真髄、走りの凄さを体感したいなら、文句なしに「ターボS」です。ただ、価格や維持費を考えると、誰もが気軽に手を出せるモデルではありません。その点、中古価格が600万円台からあるベースのタイカンは、4WDにこだわりがなければ非常にコストパフォーマンスの高いモデルだと思います。4WDの安心感が欲しいなら、スポーツセダンのタイカン4もタイカン4クロスツーリスモも素晴らしい選択です。
──その上で、あえて一台タイカンを中古車で選ぶとしたら?
私の個人的なベストバイ、という視点でお話しするならスポーツセダンの「タイカン4S」ですね。
理由は、やはり4WDであることと、パフォーマンスと電費と価格のバランスが取れている点です。
そして、もし4Sの中古車を探すなら「リアアクスルステアリング」「PDCC」「PSCB(ポルシェ サーフェスコーテッド ブレーキ)」などのオプションがついている個体はお勧めです。ただ全部揃っていたらターボ並みの価格にってしまうかもしれませんね。
それと、個人的にはガラスルーフは装備されていない方が私は好みですね。
<EVの今後について>
──最後に、EVの将来性と今後のビジネスの展望についてお聞かせください。
もちろん、私はガソリンエンジンのポルシェが大好きなので、今後も変わらず販売していきます。ただ、それ以外の車に関しては、間違いなくEVが中心になっていくでしょうね。すでにFIATやBMW、ボルボといった各社のEVを仕入れて、日々研究しています。
──EVが主流になるとお考えなのですね。
はい、そうなっていくのかなと。理由はシンプルで、お客様にとっても我々車屋にとってもメリットが大きいから。まず、構造がシンプルなので、維持や整備のコストと手間が格段に少ない。
エンジン音がない代わりに、電源ONで静かにスッと走り出すのも、スマートで近未来的ですよね。一度だけ故障でディーラーに持っていったら「システムアップデートで直ります」って。もう車もスマホやPCの仲間なんだなと驚きましたが、新しい時代の体験でしたね。
そして、日々のランニングコストが安いところもポイントです。使い方にもよりますが、今の時代、電気代はハイオクガソリンよりずっと安く済みます。新車の補助金を使えば充電設備購入のハードルも下がりますし、税金面でのメリットもありますので「買いやすい、乗りやすい、維持しやすい」というのは大きな強みです。
「充電インフラが心配」と言われますけどそれもわかります。そんなにはいないと思いますが、毎日遠出をするなんて人にとっては、充電インフラを気にしながら出かけるっていうのは煩わしさもあるかもしれませんね。ただ、自宅や職場で充電できる環境のある人にとっては日常使いではほとんど困らないのではないでしょうか。住んでいる場所やライフスタイルが合えば、EVを取り入れることをオススメします。
──EV選びの楽しさについてはいかがですか?
そこも面白いポイントで、EVは無個性だと思われがちですが、メーカーごとの味付けは全く違います。BMWはBMWらしい走りをイメージできる、ポルシェはやはりスポーティー。色々乗ることで、逆にそれぞれの魅力が際立ちます。
もちろん、ポルシェオタクの私は、結局「タイカンがいいな!」ってところに落ち着くんですけどね(笑)。でも、お客様の好みは様々です。だからこそ、今のうちからあらゆるEVに触れて、それぞれの特性を深く理解し、的確なアドバイスができるようになれたらなと。
日本人は、隣の家の人が乗り始めたら一気に普及すると思うんですよ、EVが。その時に備えて、今は猛勉強中です(笑)。
今回取材させていただいたお店:
「ポルシェはほんとにすごい車です!」
そう語るのは、ポルシェへの愛が溢れるショップ「ウィズ」の社長、関根さん。その言葉通り、空冷911から最新モデルの992、カイエンやマカン、パナメーラまで、ポルシェなら何でもおまかせで、趣味が講じてポルシェを販売し、気づけばまもなく20年、ポルシェに魅了され続けている。そんな社長が今、夢中になっているのがポルシェ初のEV「タイカン」。ベーシックモデルから驚異的な加速を誇るターボSまで、わずか1年で6台のタイカンを乗り継いで都合15,000kmを走りこんで得た魅力やリアルな感動を、日々訪れるお客様へ伝えているという。自他ともに認める「タイカン&EVオタク」の熱い話を聞きに、ぜひ一度訪れてみてはいかがだろう。展示場にはポルシェのほかに、BMW、ボルボ、フィアット、アバルトなど最新のEVも展示中とのこと。ちなみにスピード鈑金でおなじみの「カーコンビニ倶楽部」を併設。どんな車でもクィックな修理に対応してくれる。
ショップ名: | 有限会社ウィズ |
住所: | 〒349-0121 埼玉県蓮田市関山 1-6-27 |
電話番号: | 048-764-0185 |
営業時間: | 9:30~19:00 |
定休日: | 水曜日 |
ホームページ: |
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